WEB系3割の話

講演で喋るネタを探してたら丁度良いのがあったので。

 

getlife.hateblo.jp

WEB界隈なんでSIerの3割程度の労働生産性じゃねーか。という記事ですが。

ちなみにこの資料における労働生産性てのは企業における従業員1人あたりの経常利益(的なもの)です。

エンジニアが言う「生産性」は投下時間に対する付加価値であって、投下資金に対する「生産性」では無いのです。計測主体が違うのでは話しは噛み合いません。

 

ま、それはさておきWEB界隈の経営者ならみなさんご存じかとは思いますが、SIerにくらべてWEB界隈は資本が少なくてもスタートできますし固定費も小さくてすむので、そんなに経常いらんのですよね。むしろ税務的には小さくしておきたいくらいです。

SIerはデカい案件≒工期の長い案件を取るためにある程度の資金が必要です。)

経営感覚としては多少の現金なんか持っててもリスクヘッジにはならず、それよりも優秀なエンジニアをGETできるかキープできるかが勝負なんじゃないでしょうか?

 

そういった思いが統計資料に表れてたりするのかな?等と思いつつ元資料にざっと目を通して、p61に

また「インターネット附随サービス」の生産性は低くなっているが、 雇用者数の急な増加によるものであろう。

とのこと。たしかに資料でも売上高(生産性)の増加に比べて雇用者数の伸びはここ数年2割ペースと著しい。

 

平均給与も調べてみると

最新結果一覧 政府統計の総合窓口 GL08020101

平成26年では情報サービス業の現金給与390千円+年間賞与1,000千円に対し、インターネット付随サービス業では330千円+767千円と、賞与を入れても2割程度の給与差。(超過労働時間数、情サ19時間、イ付サ7時間っても見えたけど見なかったことにする)

 

もうちょい他に関連ネタがないかと探してみると、平成23年の資料で

http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/jouhoukeizai/jinzai/001_s02_00.pdf

これのp12に情報サービス従業者において39歳以下が占める割合がおよそ5割であるというのに比較して、インターネット付随サービス業での39歳以下は9割とのこと。

その他民間が公開している業種別平均年齢の表等を見てもインターネット付随サービス業はダントツの若さ。

 

結局のところ「若いエンジニアが良い給与もらってる業種」のように見えます。

これはこれで日本のエンジニアの価値を高めてると言ってもいいんじゃないでしょうか?

懸念があるとすればマーケットの拡大が頭打ちになってるところで、それは割と致命的な気もしますが、その辺は他の資料も見てみないと難しいところですね。

 

 

負債が資産に上がるとどうなるか

こちらの記事への補記としていただければ。

非エンジニアに知ってほしいこと、エンジニアに知ってほしいこと | F's Garage@fshin2000

会計上の「負債」というのは「資産」に分類されることも忘れずに。 

 「負債」って言葉をネガティブな方向にだけ使う事に対しての警鐘だと思いますが、ここで取り扱われてる「技術的負債」はもう少し突っ込んで考える必要があると思っています。

 

結論から言うと「クソコードであっても課税対象になるからね」ってことです。

資産はいつでも嬉しい物ではありません。

 

請負契約で工期が自社の期をまたぐ場合、ソフトウェアは棚卸し資産として資産計上しなければなりません。これは原価の話ですので、工事進行基準だろうが完工基準だろうが関係ありません。

じゃ、いくら計上されるの?というと、100%自社開発の場合は大抵「時数」です。

 

1人が1ヶ月で作ったモジュールなら、ざっくり言うと1ヶ月分の人件費が資産計上…。人月の世界です。クソです。

パートナーからの納品物があるならその費用が原価です。請求来てなくても納品の時点で自社資産です。

(ま、こんなこと厳密にやってるソフトハウスなんてありませんけどね!)

 

んでもって、期をまたぐ場合に資産計上されちゃってお客さんからはお金もらえてないのに利益でたことになっちゃって税金払っちゃったから次期のキャッシュフローはキツキツで人員の追加投入なんてできず、パートナーへの支払いは発生するしでもうグダグダになるんです。

ワイんとこは万年赤字だから資産なんて怖くないぜ!ってのは個人事業だけに許された特権でして、法人で純資産に余力あるからって万年赤字やってると、せっかく技術力が認められて良いお客さんから仕事取れそうになっても、予審が通らなくて直接取引できなかったり発注額に上限つけられたりで涙目になるんです。怖いですね。

 

 ソフトウェアは資産であっても負債であっても、なかなか現実と一致しないんですよね〜。

比較しようのない見積を4〜5件いただいたらどうするか?

すごく面白い記事がありましたので、乗っかってみます。

WordPressサイトを構築するといくらかかる? 見積り勉強会で価格を出してみた | WordBench

 

右も左もわからずとりあえずWEB制作会社に見積依頼したら、大抵こんなことになりますよね。比較すらできません。

ってことで見積もらった側として、各社の見積に3〜4倍ほど開きがあったらどうする?ってことを書いて行きます。

 

 10企業の選定作業は労力的に絶望なので、適当にピックアップした4社くらいをターゲットにします。

ターゲットは「Ago-HIGE」様、「ガールフレンド」様、「チーム子連れ」様、「ドしろうと」様。あ、折角なので一番高価だった「ちこく」様も入れましょう。

 

まずざっくりとした比較表の作成にとりかかります。

エクセルかなんかに転載して、同一っぽい作業がまとまるように明細を並び替えます。スクショは途中経過です。

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これなんだろう?とか考えながら数十分格闘すると、ホイ。なんとなく費目がそろってきます。

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そろえた費目で(あ、イラスト作成はマニュアルじゃないわ・・・)小計を出します。これが最初のたたき台となります。

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これで比較のためのとっかかりができました。当然ここには発注側の勝手な思い込みが含まれていますので、これを以降の作業で解消していくことになります。

 

ちなみに今回、勉強会向けにRFPを作成されとりますが、RFPを作る意義には「同じ条件で見積もってもらうため」ってのがあります。具体的に言うと時間軸における要件のブレを押さえるためです。

RFPを作らないと、あっちの制作会社には伝えたけど、こっちの制作会社には言い忘れた、とかそういうことが起こります。そうなると当然ですが、もらった見積を比較する事はできなくなります。RFPという資料にしてしまえばそういう齟齬を防ぎやすくなります。

それと同様に、制作会社の定義する「費目」のブレを修正する作業が必要になります。

なお、ここからは対人作業となります。

 

とりあずディレクション。以下、「依頼事項」とした事柄は、すべてを取りまとめた上で後で全制作会社にばらまきます。

ガールフレンド様、チーム子連れ様、ドしろうと様に対してディレクションの作業内容と「成果物や作業内容」について訪ねます。ガールフレンド様5万円に対してチーム子連れ様は10万ですが、これはチーム子連れ様のディレクションには含まれているが、ガールフレンド様の進行には含まれていない作業があると考えます。

そうすると、たとえばチーム子連れ様のディレクションには週2のミーティングが含まれているがガールフレンド様には含まれてない、とか、そんな感じのことが明らかになります。

もしそれが必要と思えば、他の制作会社にも「もし週2でミーティングやった場合のディレクション費」の見積を依頼事項とします。

必要ないと思えばチーム子連れ様に対して「ミーティングなしの場合のディレクション費」の見積を依頼事項とします。

質疑応答によってディレクション作業の内容が明らかになったら、Ago-HIGE様とちこく様に「ディレクション」を必要なしとした理由を質問します。

大抵は他の項目に按分して含まれているという回答になると思いますので、その場合は「あえてディレクション費用を外だし」にした場合の見積を依頼事項とします。他の費目の単価が下がり、ディレクション費用が明確になります。

もしくは「ディレクションはお客様にて実施願います」という回答も予想されます。その場合は「ディレクションをお願いしたらいくら?」という見積依頼事項になります。

当然、質問事項や回答事項はまとめて一つの資料にします。

こうすることで、ディレクションに対する認識のずれ(制作会社と発注者だけでなく、制作会社間の認識のずれも含む)を修正する事ができ、ディレクション費用を比較できるようになります。

 

というか、以降の費目も同じように進めます。

費目に対して作業内容と成果物を質問し、制作会社間でズレがあればズレの内容を明示してもらうことの繰り返しです。

例えば他制作会社では分割して計上してるのに単一費目に混入させている作業があれば、分割してそれぞれ費用を明記してもらったり。(合算は発注側でできます)

高い方に作業内容を聞いて、低い方に「なぜこの作業は必要ないと判断したのか?」を確認して「あ〜 やったほうがいいっすか?やりましょか?」って感じなら追加見積依頼事項。

「そんなの必要ありませんよ」って言われて、そのほうが納得できるんであれば、高いほうには「それを抜き」にして見積してもらいます。

この作業は結構有用でして、作業内容や成果物に対する認識ズレだけでなく、お互いの責任範囲についての認識ズレも修正することができます。 (プロジェクト終盤での「それってお客さんの作業っスよw」の防止です)

 

てことで4社もいればこのやり取りして見積依頼事項をまとめるだけで2週間位は余裕でかかります。

が、そこから「2回目の見積」をしてもらいます。

ここ注意!質疑応答中に電話口で金額を聞かない事!必ず資料にして渡し、資料で回答してもらう事。これ徹底しましょうね。

 

 

大抵、ここまでやれば低かった見積もどんどん抜けていた作業や成果物が追加され、結果として金額が加算されていきます。安い理由や、安くあげるための「条件」なんてのも出てきたりします。

高かった見積は、費目内の「オプション事項」がどんどん外出しにされていきます。安い制作会社の「安さの条件」を持ってきたら同じような金額になったりもします。

当然、制作会社として「見積不能」な項目も出てきますが、それはそれでそう明記してもらえばオーケーです。選定の材料として考慮できます。

 

おつかれさまでした。ここまでやりとりをした上でいただいた「見積」こそが、本当に選定の対象として利用できる見積となります。 

 

当然、ここに書ききれていないことはたくさんあります(たとえば、最初からExcelで見積もらってれば楽とか)が、ざっくりとした流れに多くの方が賛同していただければ、私も今後の仕事がやりやすくてなによりです。

 

あーつかれた。